2019年9月8日日曜日

くも

 「くも」という詩がある。“空が青いから白をえらんだのです”これは奈良少年刑務所の受刑者の一人である
A少年が書いた詩だ。
 日頃寡黙な彼が語った。「お母さんは病院で『つらいことがあったら空を見て。そこにわたしがいるから』と僕にいってくれました。それが最後の言葉でした。お父さんは体の弱いお母さんをいつも殴っていた。ぼく、小さかったから何もできなくて…」。彼は青空を見て、まっ白でふわふわのおかあさんを感じている。
 朝夕に涼風の感じられるこの頃、青空に綿のように白い雲が浮かぶのを見ながら、たった一行に込められたAくんの思いの深さを知ったような気がした。