2024年3月10日日曜日

ヨハネさんの16

 私は中学からあるキリスト教主義学校に入学した。毎朝礼拝から始まり、週1コマの聖書の授業があった。

 ある夜の団らんで、父は私にこう言った。「英語を習っているんだろう「“?John three sixteen.”って言えるかい?」「簡単だよ」と、私が応じると、父は「John three sixteen. John three sixteen.」とゆっくりと繰り返し、「ヨハネ3章16節だ、小聖書と言われている箇所だ。ヨハネさん、っていうところが面白いだろ?ヨハネ3の16」とほほ笑んだ。

 私は「John three sixteen、ヨハネ3の16」とまるで呪文のように、得意な思いでくりかえした。この光景を思い出すたびに、あのゆっくりとした父の声音が聞こえてくる。私にとっての信仰の原風景だ。