2023年5月14日日曜日

その一羽さえ

  我が家の愛猫が巣から落ちたスズメの子をくわえて帰ってきた。雛は目を閉じ、口を大きく開けたまま動かない。しかし、家人が手にしてみると生きていた。

 気がついて鳴き始めた雛をダンボール箱に入れて、餌を買いに走り、餌を与えるのに割り箸を削ってヘラを作っている。野生の鳥を育てるのは不可能に近いと思うが、家人はとにかく雛に餌を食べさせ、飛べるようにして、親に返したいとひたすら願っているようだ。

 しかし、雛は助からなかった。その雛を家人は丁寧に庭に埋めてやった。「その一羽さえ、あなたがたの父のお許しがなければ、地に落ちることはない。」「父の許しがなく」とは「父無しには」だ。このみ言葉が慰めだと家人は言う。あの雛が地に落ちたときにさえ天の父が共にいてくださったと信じられるからだ。