2013年6月30日日曜日

さえずり比べをしてみたくなった

 牧師館の前の坂道は緑の小山に続く。山の上を電車が通り過ぎた直後に、「ホー、ホケケキョ」と少し高めの細いさえずりが聞こえた。その途端「ホー、ホケキョ」と、今度は力強い艶のある返事があった。
 鶯だ!しばらく手を休めて二羽の鳴き交わす声に聞き入った。ずっと以前に、指笛で鶯と鳴き比べをしたことが思い出された。こちらが「ホー、ホケキョ」と鳴いてみせると、鶯のほうでも「お前さん、まだまだだね」とばかりに、鳴き返してくる。「ケキョ」とか
「ホケケキョ」と鳴くのはまだ修行中の若鳥だろう。
 梅雨の合間、久しぶりに鶯とさえずり比べをしてみたくなった。

2013年6月23日日曜日

海から昇る朝日

 「あさひは のぼりて 世を照らせれり」と讃美歌を口ずさみながら雨戸を開けたら、なんと曇天。まだ梅雨はあけていなかった。 
 湯河原赴任が決まったとき、海から昇る朝日が見られるのではないかという期待が浮かんだ。
 郷里の西伊豆では、太陽は山から昇り水平線のかなたに沈んで行く。子どもの頃、ひんやりと冷めてきた砂浜に腰をおろして、赤と紫を帯びた雲を従えた黄金の光が夕闇にかわっていく様をよく眺めた。
 教会の墓地は湾内を一望する小高い丘にある。そうだ、梅雨が開けたら、まだ暗いうちにあの丘に行こう。海から昇る朝日に会いに行こう。

2013年6月16日日曜日

実生(みしょう)の枇杷

 礼拝後の愛餐会で枇杷をたっぷりご馳走になった。
「今年も初物をいただけた」とS兄。K姉の畑に自生した「実生(みしょう)の枇杷」だ。
 「実生」とは枇杷の種類ではなく、種から一人生えしたものの総称だと初めて知った。しっかりとした酸味とほのかな甘みの初夏の実は自然の恵。
 そう云えばエデンの園にも枇杷の樹があったに違いない。「それぞれの種を持つ実をつける果樹を、地に芽生えさせよ」と神は言われた。
 先週、街を歩いていたら鈴なりの枇杷の大木に出くわした。これも実生の枇杷だろうかと眺めたら、楽しいひと時とあの味がよみがえってきた。

2013年6月9日日曜日

たっぷりともてなしてみたら

 台所の壁に浮かんだ唐草模様の渦巻きが忙しく動いている。ワッ、蟻!思わず体が痒くなりそうだった。退治しようにもきりがない。ウーン蟻たちを殺さずに撃退する方法はないものか。蟻たちの命を保証して、しかも殺虫剤も使わずに・・・。
 彼らは食べ物が足りないからやって来るのだと気がついて、彼らを追い立てるのではなく、たっぷりともてなしてみてはどうかと思いついた。
 外壁際の蟻の道に格安ビスケットを振る舞ってみた。彼らは相変わらずせっせと働いている。外で!
 箴言に「怠け者よ、蟻のところに行ってみよ。その道を見て、知恵を得よ」とある。納得、納得。

2013年6月2日日曜日

動きのある景色

 動きのある景色はいい。見ていて見飽きない。目をあげて、窓の外を見ることは気分転換になる。
 南に見える山は緑が濃くなって夏の色合いだ。ふと見ると右手の山の中ほどを東海道線の電車が走って行く。左下の道路を車が行き来している。
 近所の人が家の前を通り過ぎた。向こうの家の屋根に一匹の黒猫がいて、あっという間に二階の窓に飛び乗った。それから座って、こちらを見ている、・・・多分。
 動きのある景色、それは私達の暮らし、私たちの社会そのものだ。創造主はこの一つひとつの動きをじっとご覧になっている。